ついに我々はサンチャゴにたどり着いた。カテドラルでマリア様にお祈りをした。
「今日はボタフメイロが見られるわ。ほら準備している。」とガイドが言った。
「なに、なに、ボタナントカ・・・」
私は英語ガイドの説明を日本語に通訳しなければならない。50kgの銀の香炉をロープでぶら下げてカテドラルの翼廊いっぱいに振るのだという。
「あ、それ、テレビで見たことがあるわ。」
と誰かが言った。
私は見たことがない。お客様たちは何でも知っている。
午前の観光の後はフリータイム。夕食のメニューの打ち合わせをしてカテドラルに戻るとすごい大群が来ていた。
煙でもうもうとしている。バルサンを炊いたみたいだ。
銀の香炉が私の目の前を通りすぎていった。
なんだ、なんだ。ん?
また銀の香炉が反対方向に飛んでいった。その度に広いカテドラルが煙でいっぱいになる。ほのかにいい香りがする。
これがボタフメイロだ!
私は人ごみを掻き分けて前に出た。
6名の修道士たちがヨイトマケのごとくロープをひっぱる。巨大香炉はぶるるるる~んとカテドラル内をスゥイングする。
これぞホーリースモーク(聖なる煙)だ。東京の浅草寺でも人は煙を浴びているがスケールが違う。
カトリックのやることはすごい。
大エンターティメントだ。この香煙を浴びたものはたちまちのうちにカトリックの信者になりたまふ。
線香の煙を服や頭につけてお経を唱えている仏教徒は負ける。
赤いマントの司教がぶつぶつお経を唱える。ありがたい。
司教様が50kgの銀製香炉にぶら下がってスゥイングするともっとありがたいのだが。
私もそのロープを一緒にひっぱりたい。
ボタフメイロの儀式が終わってもまだ余韻を味わっていた。
我々はみなお腹がすいていたが、すっかり俄か信者になってしまい、カテドラルの美術館も拝観した。
翌日ドライバーにボタフメイロを見た話をすると「200ユーロ払ったらいつでも見られる」というので、昨日のありがたみが薄れてしまった。
しかもボタフメイロなるものの起こりはこうだ。長旅を終えた巡礼者たちがカテドラルに勢ぞろいするとあまりにも汗臭い。その臭さに耐えかねた司教と坊さん達が、カテドラル内を香りで満たすために始まったそうである。
ますますありがたみが薄れた。やっぱり線香の香りで満足する仏教の勝ちである。このページのトップへ
Vol. 5 北スペイン 巡礼+αの旅 「ボタフメイロを見た」
6 月 25th, 2006 · No Comments
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