Vol. 5 北スペイン巡礼+αの旅

santiago

この国にいても神さんとか仏さんは参っておいたほうがいい。
ヨーロッパを旅行するとやたらとカテドラルとか教会とか礼拝堂を訪れる。観光客の我々もクリスチャンのような顔をして祭壇の前にたち、手を合わせる。ローソクまで買ってしまう。イスラム教の国に行くとアラーにひれ伏す。アラーがどんな顔してるのかさっぱりわからないけど、預言者マホメットにも敬意を表しておいたほうが安全に旅行が続けられそうだ。

002今回はキリスト教の三大聖地サンチャゴ・デ・コンポステラを目指す旅である。三大聖地とはエルサレム、ローマ、そしてスペインの北西にあるサンチャゴ・デ・コンポステラである。  
エルサレムで殉教した大ヤコブ(スペイン語でサンチャゴ、フランス語ならサン・ジャック、英語ではセント・ジェームス)の遺骸が海を越えてガリシアのこの地に運ばれてきたのだという。
003道中たくさんの巡礼者に出会った。我々はバスで追い越して「ファイト、ファイト」と声をかけるだけだったが、フォンセバドンの村やモリナセカの町はちゃんと巡礼者と同じ道を歩いた。しかし巡礼ばかりしていられない。北スペインには海がある。山がある。おいしいワインの産地がある。教会だけを回っているわけにはいかん。巡礼+αというコースを作ったが、αだらけの旅だったかもしれぬ
  1. ボタフメイロを見た
  2. ロマネスクの小さな教会がステキ
  3. スペインはワインだ!!
  4. グッゲンハイム美術館(ビルバオ)

ボタフメイロを見た

ついに我々はサンチャゴにたどり着いた。カテドラルでマリア様にお祈りをした。
「今日はボタフメイロが見られるわ。ほら準備している。」とガイドが言った。
「なに、なに、ボタナントカ・・・」
私は英語ガイドの説明を日本語に通訳しなければならない。50kgの銀の香炉をロープでぶら下げてカテドラルの翼廊いっぱいに振るのだという。
「あ、それ、テレビで見たことがあるわ。」
と誰かが言った。
私は見たことがない。お客様たちは何でも知っている。
午前の観光の後はフリータイム。夕食のメニューの打ち合わせをしてカテドラルに戻るとすごい大群が来ていた。
煙でもうもうとしている。バルサンを炊いたみたいだ。

botafmeiro

銀の香炉が私の目の前を通りすぎていった。
なんだ、なんだ。ん?
また銀の香炉が反対方向に飛んでいった。その度に広いカテドラルが煙でいっぱいになる。ほのかにいい香りがする。
これがボタフメイロだ!
私は人ごみを掻き分けて前に出た。
6名の修道士たちがヨイトマケのごとくロープをひっぱる。巨大香炉はぶるるるる~んとカテドラル内をスゥイングする。
これぞホーリースモーク(聖なる煙)だ。東京の浅草寺でも人は煙を浴びているがスケールが違う。
カトリックのやることはすごい。
大エンターティメントだ。この香煙を浴びたものはたちまちのうちにカトリックの信者になりたまふ。
線香の煙を服や頭につけてお経を唱えている仏教徒は負ける。
赤いマントの司教がぶつぶつお経を唱える。ありがたい。
司教様が50kgの銀製香炉にぶら下がってスゥイングするともっとありがたいのだが。
私もそのロープを一緒にひっぱりたい。
ボタフメイロの儀式が終わってもまだ余韻を味わっていた。
我々はみなお腹がすいていたが、すっかり俄か信者になってしまい、カテドラルの美術館も拝観した。
翌日ドライバーにボタフメイロを見た話をすると「200ユーロ払ったらいつでも見られる」というので、昨日のありがたみが薄れてしまった。
しかもボタフメイロなるものの起こりはこうだ。長旅を終えた巡礼者たちがカテドラルに勢ぞろいするとあまりにも汗臭い。その臭さに耐えかねた司教と坊さん達が、カテドラル内を香りで満たすために始まったそうである。
ますますありがたみが薄れた。やっぱり線香の香りで満足する仏教の勝ちである。

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ロマネスクの小さな教会がステキ

教会に向かってステキとは何事ぞ。今分譲中のモデルハウスと同じように見るとはけしからん!と怒られそう怒られそうだ。
ヨーロッパの数々の教会でキリストさんやその仲間達の像を見てきたが木造彫刻においては日本の仏像のほうがずっとレベルが高いと思う。だから海外の添乗を減らして、外国人に日本を紹介するガイド業をしている。
東大寺の南大門。運慶、快慶の仁王像がある。
「どうだ、まいったか。仁王さんの足を見よ。爪を見よ。血管を見よ。これほどの木彫がイタリアにあるか。」
しかしロマネスクの美術となると別である。10~12世紀に流行した教会の建築、装飾、フレスコ画、石彫、どれも素朴であたたかく心がなごむ。
特に教会のフレスコ画におもしろいものが発見できる。絵本に使えそうな可愛い聖人。目が大きくて親近感がわく。棟方志功の描く観音さんと合い通じるものがある。
レオンのサン・イシドロ教会の壁画はロマネスクの傑作だと思った。アストゥリアス地方のオビエドとその郊外に6つのロマネスク教会があり世界遺産に登録された。8~10世紀に建てられた教会である。

church

サン・ミゲル・デ・リリョ教会。駐車場にバスを止めて雨の中をせっせと坂を上っていくと草むらの中に小さな石の教会がぽつんと建っていた。 おかしい。9時半になってもドアが開かない。中に人がいる気配もない。しょうがない世界遺産だ。 傘をさして教会のまわりをうろうろする。周囲の緑がしっとり濡れて美しい。 通りすがりのおじいさんに声をかけた。

「ブエノスディアース!ア・ケ・オラ・エスタ・イグレシア・オブリール?」(何時に教会が開くの)単語並べのスペイン語でも通じたみたい。おじいさんがべらべらしゃべりだしたので、ガイドのマリアンを呼んだ。鍵をもった人が下のもう一軒の教会にいるらしい。マリアン、そいつを捕まえよう。鍵をもらって扉を開けた。1000年以上も前のフレスコがうすく残っていた。世界遺産だというのに誰も来ない。入場料を取る人もいない。石造りの飾り気のない教会。京都の大原三千院の庭にある可愛い石仏を持ってきて祭壇においても似合いそう。 1000年もの間一人でちゃんと草地に建っていた。

「私が行ってあげなくて誰が行くの。」

母性本能あるいは老婆心をくすぐるような、いとおしい教会だった。 サン・フリアン・デ・ロス・プラドス教会のフレスコ画はもっと鮮明に残っていた。

北スペインはロマネスクの宝庫だ。 最初に訪れたのはブルゴスの南東にあるサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院。中庭の回廊の石彫がすばらしい。キリストにしても聖人にしてもみな愛嬌がある。
「やや、こんちはー。」
と思わず頭を撫でてあげたくなるのは私だけでしょうか。
「そうです。あなただけです。触ったらいかん!」

monastery1

monestery2

ブルゴスからパンプローナへの街道沿いの小さな村や町にも教会がいくつもあった。ガイドブックにも紹介されない教会にもふと足を止めると「まぁ可愛いこと」と触りたくなる石の彫刻がたくさんあった。
北スペインは何度でも訪れる人が多い。クリスチャンでなくてもこの地方の教会巡りは飽きることがない。

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スペインはワインだ!!

ハバナからバスで3時間のビニャーレスという風光明媚な田舎で2泊する予定だったが、雨ばかりで乗馬もできなかった。それでタクシーをチャーターしてハバナへ戻ってきた。

 ブルゴスから1時間ほど東に走るとサント・ドミンゴ・デ・ラ・カルサダという小さな町がある。パラドールに一泊してパンプローナに向かう。 
ぶどう畑、ぶどう畑、ぶどう畑の中を走る。 ぶどう畑の農道を巡礼者たちは杖をもって西に向かう。我々はバスに乗って東に向かう。このあたり一帯はリオハ地方。スペインの有名なワインの産地だ。我々はその隣のナバラ地方のぶどう畑を訪れた。門をくぐってからバスで10分走るとやっとワインセラーの建物が見つかった。 
フランシスコ・ザビエルもここに滞在してワイン作りをしたという農園サリアである。ワインセラーでワインの試飲をしながらついでにおつまみを食べて昼食にしようという計画である。 
係りの女性が出てきてまず畑、そしてワインの樽に案内してくれる。

tasting

ワインの作り方はどこの国でも同じだ。うんうん、わかった、わかった。次行こ。うん、うん、なるほど。次はテイスティング?お腹がぺこぺこの面々の目つきがするどくなってくる。やっとテーブルに案内してくれた。ワインの試飲というのは通常ワイングラスにちょいと注いで香りを感じ、口に中にワインを転がして味わうものだ。どこの国でもワインのティスティングはそうしていた。 ここは違った。どんどんワインを持ってくる。いくらでも飲んで飲んで。タパス(おつまみ)も来る来る。うれしい限りである。こんな豪快なティスティングは幸せだ。タパスはおつまみ以上のものだった。全部おいしい。一流のコックさんが作ったようなタパスだ。そのワインセラーはつい最近5つ星のレストランも始めたそうだ。それでタパスも5ツ星のシェフが作ったものだ。こりゃ、おいしいわな。ワインがすぐ空になる。次から次へと違う銘柄を出してもらう。一番高いワインだけは栓を抜いてくれなかったので自分で一本買った。53ユーロ。 これはいつ開けるのかと毎日ドライバーに尋ねられた。最後の晩餐まで大切に保管しておいた。ツアー最後の夕食。サンチャゴのレストランはワインの持ち込みを許してくれたどころか、ワインを開けてしばらくおいてくれた。ご主人が「もうついでもいい」とお許しが出るまでは店のサービスのワインでがまんした。そしてみんなについでくれた。750CCを14人で分けて飲むと一人あたりグラスの半分しかない。おいしかった。ほんとにおいしかった。セニョリオ・デ・サリア レセルバスペシャル2001(ぶどうはテンプラニーリョ、河ベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー)サリアのワインセラーの訪問を手配してくださった関さんに感謝します。
* 関氏はスペインのワインを輸入していますのでサリアのワインを日本でも買えます。 http://www.nisseishouji.co.jp/

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グッゲンハイム美術館(ビルバオ)

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10年前に北スペインのツアーをした時はビルバオなんて工業都市は高速道路を走りながら遠くに見て通り過ぎた。今ビルバオは世界の美術ファンの注目を集めている。
1997年にグッゲンハイム美術館がオープンしたのだ。グッゲンハイム美術館はニューヨークとベネチアにある。ビスカヤ県とビルバオ市は地域活性のためにグッゲンハイム財団に130億円払って美術館の設立にこぎつけたらしい。
バスを降りたとたんにモダンな建物が目に飛び込んでくる。トロント出身の建築家フランク・O・ゲイリーの設計だ。ピカソのアコーディオン奏者からヒントを得たというチタン仕上げの建物。

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玄関の前に10mの巨大犬が番をする。菊人形ではなく花で飾られた犬である。
『ロシア!』展をやっていた。この美術館の誇る常設のモダンアートも大急ぎで見た。くねくねの壁の中を歩き、何これ!?わけのわからんアートばかりだがみんな楽しくなる作品だ。
思わず「あーほーちゃう?」を笑ってしまうのが現代アートだ。川沿いのテラスには六本木ヒルズと同じ巨大クモがいる。クモの股の下で写真を撮っていたらもくもくと霧がたちこめてきた。札幌出身の中谷芙ニ子(ナカヤフジコ)の霧の彫刻だ。

この美術館のレストランは超人気だ。ここで昼食をするのが私の目的だった。予約はちゃんと取れた。カフェテリアの入口には行列ができている。気軽な食事もできるが我々は4コースのメニューだ。ワインもしっかり飲む。これだけ混んでいるのにサービスはちゃんとしている。食事はもちろんおいしかった。
えんどう豆のスープ(のようなもの)
子牛のエスカロープ又はベルデル(魚)のグリル
デザート(難しい名前なので訳せない)
コーヒー
メニューを日本語に訳すとこんなに簡単になってしまうが、スペイン語では難しそうな高そうな名前がついていた。

ヨーロッパに来るとレストランのサービスのよさに感心してしまう。ウエイターやウエイトレスは食事を楽しんでもらうためのプロフェッショナルだ。お皿の運び屋とはちがう。忙しくあたふたとサービスしながら、にこっと微笑んでくれる。マクドナルドのようなマニュアルどおりの笑顔ではない。

外国のウエイターはほんとにだめや!とおっしゃるお客様がいるがお釣りのまちがいのことだろう。

日本の高級なレストランや料理屋に行ってもメニューや素材をちゃんと答えられる人は少ない。食事を楽しませるプロはほんとに少ない。

北スペインのツアーはどこの旅行会社でもやっているのにどうしてグッゲンハイム美術館を入れないのでしょうか。

horse estella-monastery estella town estella bridge enol-lake

2006/06/01記

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